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旅の終わりに残ったのは、モノと人の記憶 ― 12月の沖縄で
営業スタッフの北嶋です。
2025年が終ろうとしています。
いろんなことがあった1年、いくつかの旅もしました。
今年最後の旅、12月の沖縄は心に強く残り、
好きなモノに囲まれて暮らすこと、出会いや縁を大切にすることなど
原点回帰の旅となりました。読んでいただけると嬉しく思います。
今年の春、雑誌でみた一枚のTシャツが、この旅の始まりだった。
沖縄在住のイラストレーター、ミレイさんのTシャツ。
https://renemia.base.shop/items/114350107
やわらかな線で描かれたモチーフは、強く主張するわけでもなく、けれど不思議と目に留まり、心に残った。
流行やメッセージ性が前に出る服ではない。
年齢のせいか似合うTシャツに巡り合わないこの頃、、、この夏、このTシャツは大活躍した。
理由ははっきりしないまま、「沖縄」という言葉だけが、静かに頭の中に居座るようになった。
前回沖縄を訪れたのは、25年ほど前。
強い日差し、鮮やかな海、南国リゾートを満喫した。
若い頃の記憶として、どこか輪郭のはっきりした沖縄が残っている。
けれど今、もう一度行きたいと思った沖縄は、まったく別の姿をしていた。
観光地としての沖縄ではなく、
人が暮らし、ものが生まれ、日々が静かに積み重なっていく場所。
民藝が好きになり、器や手仕事のものに自然と惹かれるようになった今だからこそ、
このタイミングで沖縄を訪れる意味があるような気がしていた。
夏前に、偶然目にしたピーチのセール。
迷いはほとんどなかった。
当時、私は家族の看病で疲れていたし、航空券を買っても行けるかわからなかった。
とりあえず航空券のチケットだけを購入し、
行けなくなっても仕方ない、行ける状況だったらいいな。
こうして12月の沖縄行きがぼんやりと決まった。
冬の沖縄が教えてくれたこと
12月の沖縄は、思っていた以上に穏やかだった。
空は明るいけれど、日差しはやわらかく、風も静か。
半袖では少し肌寒く、長袖が心地よい。
観光客の数も落ち着き、
街にはどこか「日常に戻った沖縄」の空気が流れている。
この季節を選んだことは、結果的にとてもよかったと思う。
沖縄の強さや派手さではなく、
その土地の呼吸や間(ま)に、自然と意識が向いたからだ。
壺屋やちむん通りで立ち止まる
那覇市の壺屋やちむん通りは、以前から一度歩いてみたいと思っていた場所だった。

通り沿いには、いくつもの窯元や器屋が並んでいるが、
どこも控えめで、過剰なアピールはない。
その空気感に、まず安心した。

ふらりと入った店舗。
器をひとつひとつ手に取りながら、
土の表情や釉薬の溜まり方を眺めていると、
自然と時間がゆっくり流れ始める。
そんな中、棚の一角に置かれていた小さなオブジェが、視界に入った。
器とは明らかに違う佇まい。
けれど、場違いな感じはしない。
名前は「tuiobjet(トゥイ オブジェ)」。
丸みを帯びたかたちは、鳥のようにも、感情のかたまりのようにも見える。
手に取ると、想像していたよりも重みがあり、
土の温度がじんわりと伝わってきた。
この旅のきっかけを思い出す瞬間
スタッフの方に伺うと、
このtuiobjetは、沖縄在住のイラストレーター、ミレイさんの描く「tui(鳥)」のイラストをもとに、
育陶園の職人さんが立体化したものだと教えてくれた。
その瞬間、頭の中で点と点がつながった。
ああ、そうだった。
この旅のきっかけは、ミレイさんのTシャツだった。
イラストという平面の表現が、
やちむんという土の文化と出会い、
触れられる立体として存在している。
そのこと自体が、とても沖縄らしく感じられた。
tuiobjetという、感情のかたち
tuiは、ミレイさんの作品世界「peaceful garden(平穏な庭)」に登場する鳥が原点になっている。
鳥たちが集い、静かな時間が流れる庭。
その情景が、絵から陶へと形を変え、tuiobjetとして生まれている。
tuiobjetには、全部で五つの種類がある。
heart、happy、peace、think、hope。
どれも感情や状態を表す言葉が名前になっているが、
意味を限定するものではない。
見る人が、そのときの自分の気持ちを重ねればいい。
沖縄の赤土を使い、
育陶園の職人さんがひとつひとつ手作業で焼き上げたtuiobjetは、
同じものは二つとしてない。
そのわずかな違いが、
まるで人の感情の揺らぎのようで、心に残った。
RENEMIAへ導かれて
tuiobjetのほかのかたちも見てみたい。
そう思い、全種類が見られる場所はないか尋ねると、
ミレイさんのギャラリー「RENEMIA」が、歩いて行ける距離にあると教えてもらった。
観光の予定には入っていなかった。
でも、この流れには逆らわないほうがいい気がした。
市場や繁華街をぬけて歩いていくと、RENEMIAにたどり着く。
そこは、ギャラリーというよりも、
誰かの暮らしの延長線上に、そっと開かれた場所のようだった。

そして、そこにいらっしゃったのが、ミレイさんご本人だった。
冷たいコーヒーを飲みながら、ゆっくりと話をする時間。
作品のこと、沖縄の暮らしのこと、
その語り口はとても穏やかで、
作品から受け取っていた印象と、驚くほど重なっていた。
沖縄で表現する、という選択
ミレイさんの作品には、
いわゆる「沖縄らしさ」は前面に出てこない。
青い海や強い色彩ではなく、
むしろ余白と静けさがある。
けれど、それこそが、
沖縄で暮らす日常のリズムなのだと感じた。
見る人に、感じ取る余地を残すこと。
tuiobjetが、やちむんの技術と無理なく結びついている理由も、
そこにあるのだと思う。
選んだふたつのtui
すべてのtuiobjetを前にして、
私が選んだのはheartとpeaceだった。


理由は、はっきりとは言葉にできない。
でも、それが今の自分に必要な感情だということだけは、確かだった。
それは「作品を買った」というよりも、
旅の時間や感覚を、暮らしに迎え入れた感覚に近い。
もうひとつの出会い ― ガラス工房 清天
この旅には、もうひとつ忘れられない出会いがある。
旅の一日目、読谷村のやちむんの里を訪れたあと、
近くのカフェで出された琉球ガラスのグラス。
その揺らぎと厚みに、思わず目が留まった。
「これは、どこのものですか?」
そう尋ねると、
ガラス工房 清天のグラスだと教えてくれた。
しかも、工房はすぐ近くにあるという。

迷わず向かった清天。
商品はもちろん、スタッフの方々のやさしさが印象的だった。
コップや一輪挿しを選ぶ時間は、本当に迷うほど楽しかった。


後で知ったが、清天のガラスは多くのカフェやホテルでも使われているそうだ。
あの一言がなければ、きっと立ち寄らなかった工房。
旅の終わりに残ったもの
今回の沖縄旅で強く感じたのは、
ものに触れ、人と話すことで、旅は何倍にも深まるということだった。
Tシャツから始まり、
tuiobjetに出会い、RENEMIAでミレイさんと言葉を交わし、
カフェでの出会いでガラス工房 清天を知る。
どれも計画通りではない。
でも、今の自分の価値観が引き寄せた必然だったように思う。
旅から戻り、
tuiobjetや琉球ガラスを日常で使うたびに、
12月の沖縄の空気が、静かによみがえる。
旅の終わりに残ったのは、
モノと人の記憶だった。
